臓器移植では、提供する人(ドナー)の臓器と移植を受ける人(レシピエント)の相性をみる組織適合性検査が行われます。主な検査としては、HLAタイピング、リンパ球クロスマッチなどがあります。
術前に検査を行うことで、超急性拒絶反応の回避、拒絶反応の軽減、レシピエントの同種抗原に対する免疫応答の推測することができます。リスクが高い場合は、脱感作療法を行うなど拒絶を抑える対策をする場合があります。
術後にも組織適合検査を行うことで、抗体関連型、拒絶反応の診断、治療効果判定などに役立ちます。
(1)HLA検査
白血球をはじめとする全身の細胞には、ヒト白血球抗原(HLA:Human Leucocyte Antigen)と言われる型があります。HLAは両親からそれぞれ半分ずつ受け継ぐため、親子や兄弟の間でも一致する確率は低く、まして非血縁間では数百〜数万分の1の確率でしか一致しないといわれています。臓器移植では、自分のHLAのタイプに合わないものはすべて異物と認識して攻撃を始めてしまうため、HLAの適合性が重要視されます。ミスマッチが少ないほど生着率が高いとされています。またドナーのHLA はレシピエントがドナー特異抗体(DSA:Donor Specific Antibody)を持っているか推測する上で極めて重要な情報となります。
DNAタイピングPCR-SSP(sequence specific primers)法
① DNAサンプルを抽出
② PCR(ポリメラーゼ連鎖反応、polymerase chain reaction)
(2)リンパ球クロスマッチ
ドナーのリンパ球(Tリンパ球、Bリンパ球)とレシピエントの血清をかけあわせ、拒絶反応の起こりやすさを予測する検査です。
一般的には、血清学的手法であるリンパ球細胞傷害性試験法(Complement-dependent cytotoxicity ,CDC法)が行われますが、より高感度なフローサイトメトリーを用いた方法(Flow Cytometry CrossMach,FCXM)もあります。抗HLA抗体を同定するフローPRA法と組み合わせることで、ドナー特異抗体を特定することができます。
① 血液の処理
② Tcell、Bcell分離
TおよびBリンパ球以外の細胞に抗体と磁気ビーズを結合させ、これを磁気で除去する
一般に障害率10%以下であれば陰性とされますが、移植適応基準は施設によってさまざまです。
腎移植の場合、Tcellの反応が陽性の場合は超急性拒絶反応を起こす可能性が高く、これまで移植禁忌とされていました。しかし今日では医学の進歩により術前に脱感作療法等することで移植する症例も増えていっています。
フローサイトメトリーを使ってリンパ球クロスマッチをするFCXM法は、このCDC法より高感度で、非補体依存性抗体も検出可能という特徴があります。しかし、FCXM法はまだ歴史が浅く、高額の機器や試薬を必要とするため、一般の施設にはあまり普及していません。
また、移植禁忌のカットオフレベルは未だ標準化されていないため、FCXM法で陽性であっても必ずしも移植禁忌となるわけではありません。移植後の抗体産生や抗体価動向のモニタリングでも活用されています。